ひとひろ

日常より、もう少し深いところへ。ひびのこと、たびのこと、ならのことを綴ります。

ひとひろ

*夏休みのワンピース

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夏がとても、とても苦手だ。
盆地に引っ越してきて二年が過ぎても、その気持ちは一向に変わらない。
梅雨が明けたときから灼熱地獄が恐ろしくてびくびくと暮らしていた。

いつの間にやら夏が終わろうとしている。
案外、なんとか、生きている。

ごきげんになれるワンピースを買おう。
お盆を前にした私は、そんな浮かれた考えを思いついた。
鮮やかな色で、さらっと一枚で着られて、軽やかに過ごせそうなやつがいい。 私のごきげんの定義は、曖昧で、なかなか厳しい。
けれども探しはじめてすぐに、出会ってしまったのだ。

大好きなピーコックブルーのワンピース。
首元の形は前と後ろで違っていて、気分で変えられる。
ウエストのリボンも、結んでも結ばなくてもいい。
ポケット付きなのも、いい感じ。
そのワンピースは、色も形も申し分ないものだった。
そして何より、「夏休みのワンピース」という名前がいい。
「夏休みのワンピース」は、週末の楽しい過ごし方を提案する人たちが作ったものだった。
まさにうってつけの服だったというわけで。
うきうきしながら注文して、私は盛夏を待つ。
暑くなるのを待つなんて、今までの人生で初めてなんじゃないだろうか。
それだけでも、買ってよかったと思う。
明日を前向きに待てるというのは、後ろ向きな私にとってとても大切なことだ。

初めて着た日には大雨に見舞われて、絞れそうなほどに濡れネズミになった。
花火大会に着ていったら、あまりの暑さに汗でしょっぱいワンピースになった。
たっぷりした裾を踏んで、たくさん転びそうになった。
夏休みのワンピースと過ごす日々は、毎日が順風満帆というわけではなかったけれども。
褒められたら照れくさいけど、嬉しかった。
何より苦手で嫌いな夏を、楽しく過ごすことができた。

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ごきげんになれるワンピース作戦は、大成功。
何もかもが面倒くさくなるときもあるけれど、見た目から整えるのは有効だと思う。
お気に入りのワンピースを着て、好きな色の化粧品でメイクをして。
そうしたら外に出ようかなって気にもなれるから。

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去年はあまりの暑さにたまらなくなって、家を出て数メートルで帰ったこともあったなあ。
今年はそんなこともなく。
いつしか晩夏で、もう秋の足音が聞こえている。

ついつい楽をしたくなる。
それも息を詰めすぎないためには、大切なこと。
でも、時にはごきげんになれるものを用意したっていいんじゃないかな。
来年もどうか、よろしくね。
また、夏を楽しく過ごそうね。

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ゆのじ